簡単なキャラ設定


名前:高鹿
高校生ぐらいの見た目をしている女子。
何故自分がここ(ゾンビ地区)にいるのかわからない。

看護婦さんに出会い、いろんな人と出会って、生きるために目標を持つことにした。それが世界の真相を求め始めた理由。

ゾンビ化をまぬがれ、後遺症も無くなってきたのでそれなりに努めて明るい。
白紙の日記帳を持ち、誰かと情報を交換したがっている。

【最新状況】
体:38 食:13 探:12
同:看護婦(HP1/day回復) 持:白紙の日記帳(探索度を1〜3まで他人に譲渡可)
フラグ:クリアB

個人的見た目絵:一人 他フォロワーさんと一緒 厨二病。

一日目


今日の高鹿:【戦闘】ゲーセンでゾンビの集団と遭遇! 隣にゾンビゲーがあるのが悪い冗談のようだ! 9のダメージ! フォロワーの助けを得られるなら6のダメージ。 いずれにせよ食糧:−2


ゲーセンでゾンビに襲われたけどフォロワーさんに助けてもらえた。
HP:94 食糧:98 持ち物:無


彷徨っていた時、懐かしいゲームセンターが目に入る。

何かないかと足を踏み入れた瞬間、古いゾンビゲーの筐体が揺れ「そいつら」が襲ってきた。くそったれ!自分の浅慮さを呪うしかない。反射で頭を守った時、痛みと共に刀を構えた友人と銃声音が割り込んできた。

あぁ生きた人間だ。安堵した私に彼らは手を差し伸べてくれ、生きてここから脱出しましょう、と笑いかけてくれる。聴けば銃を構えた彼の命は短いらしい。この恩人に私が出来ることは何かないのだろうか。空の手を見下ろし、空気を掴んだ。

知り合いは刀をしまいながら私の傷を痛ましそうに眺める。庇い切れなった、と呟いたのは独白なのか謝罪なのか。私は二人の手を掴んで、ありがとう、と言った。それだけしか持っていなかった。

二日目


今日の高鹿:【探索】食料庫発見! だが重い扉はひとりでは開きそうにない。【同行者】を連れているかフォロワーの助けを得られるなら食糧+7。さもなくば無駄骨に終わって食糧−3。 | 誰か山分けしようぜ。出来るのかわからないけど。


食糧庫を見つけ、フォロワーさんと一緒に開けて山分けした。
HP:94 食糧:100 持ち物:無/武器と情報がほしい。


何か食べ物はないかと探していたらとうに廃業されたホテルの裏に食糧庫を見つけた。背に腹は代えられない、と窃盗罪を気に出来る辺り私はまだ狂っていないらしい。とにかく開こうとしたのだが、重い。すごく重い。諦めて自分の食糧に手を伸ばした時、人影が見えた。

顔を上げてみると昨日助けてくれた彼がそこにいた。手伝ってくれないかと試しに言ってみたら、私の力でよければ、と。お礼にもならないかもしれないが、私は持てない食糧を彼に渡した。さて、これからどうしよう。武器も情報も目的もない。

三日目


今日の高鹿:【探索】ゾンビ撃退の戦力を欲しがっている生存者に遭遇。何か武器(【戦闘】ダメージを軽減するアイテム)または同行者を譲るなら食糧9をくれる。いずれにせよ食糧:−1 | 私が欲しいぐらいですよ。


生存者にが武器を持っていないかと訊かれたけれど、何か言う前に無言で去った。 HP:94 食糧:99 持ち物:無/武器欲しいね。


食糧も満タンで暫くは困らないな、と歩いていたら森の影から女性が出てきた。何か武器が欲しい、と言われたけれど彼女は私が空の手であることに気が付いたのか、はたまた今までこうしてきた経験則からか、私が武器を持っていないことにすぐさま気が付いたようだ。

確かに武器を持っているのならば構えるだろう。この変わり果ててしまった世界でああして生きながらえようとしているのなら、そういう場面になっている可能性は私よりずっと高い。 武器が、力が欲しい。けれどそれを間違いなく使うことが私に出来るのだろうか。

ぼぅっと考え事をしている間に女性はいなくなっていた。そういえば気が付いたような気がしたときにはもう足音がしていたかもしれない。私はまた歩きはじめる。武器を扱えるかは、その時に考えよう。有るなら、使わないという選択肢が。無いなら選択肢すらないのだ。

四日目


今日の高鹿:【休息】安全そうなホテルを発見。今日はゾンビに襲われることもなく、ゆっくり休めそうだ・・・。HP:+5 食糧:−3 http://t.co/QrRu067J | 休息はいいから武器をだな。


安全そうなホテルを発見し、少し多目にご飯を食べて体力回復。
HP:99 食糧:96 持ち物:無

ホテルの周りを散策中、ゾンビと戦闘をした方から治療薬を頂く。
HP:94 食糧:96 持ち物:治療薬×1/やったー。

治療薬を渡した際に拳銃をいただいた。ありがとうございました。
HP:94 食糧:96 持ち物:拳銃(被ダメ:-1。最低1)


背に食料を携えながら歩いていると、まだ崩れ落ちていない廃ホテルを発見した。覗いてみると埃くさかったがゾンビはいなさそうで安心する。休息に食事は必要不可欠。普段より多目に食べて、私は明日に備えることにした。

明日も大事が起きなければいいのだけれど。




休息用のホテルを中心に何かないかと歩いていたら、ゾンビの傍らに座る人影がいた。立ち上がった影はきらりと太陽の光を反射する何かを持っていて、私はその人に近づいて訊ねる。すると、これは治療薬、と通る声がした。

治療薬?、と言葉を反芻すれば、ゾンビ化を止めることができる薬です、なんて素晴らしい響きが聞こえてくる。それさえあればあの、私を助けてくれた人に恩返しができるかもしれない。しかし私は何も持っていなかったから背負っていたバッグを下ろす。

「食料と交換していただけませんか」

私が言うと、彼は首を振った。

「食料はいりません。もともともう一つ治療薬はありますし」

けれど、ただ、と逆接が続く。私は身構えた。

「これは貸し一つにしてください。何かあった時に助けてくれたらそれでいいです」

身構えた私は肩の力を抜き、ありがとうございます、とお礼を告げる。

「何かあったときは駆けつけます」

そう言って頭を下げ、私たちは別れた。これであの人を助けられるかもしれない。今日は休息を取り、明日探しに行こう。小さいけれど、やっと目的が出来た。




昼間に散歩したにもかかわらずあまりよく寝付けなくて、私はベッドから体をおろした。……ゾンビ、この辺にはいないみたいだし星を見に行ってみようかな。最近は気の休まる時間がなかったからたまにはこんな日があってもいいかもしれない。

外に出て、少しホテルから離れたところでゆらゆらと揺れる赤い光が見えた。誰かいるのだろうか、と近づいてみるとそこには私が明日探そうと思っていた人物。彼も私に気が付いたらしく、視線をくれたのだけれど一瞥して戻されてしまった。

「あの」
「……何だ」

にべもなく返され、少し体が委縮したけれど私は一歩踏み出す。

「近付くな」

生気のない声。その理由を私は知っている。助けてもらった時に、教えてもらったから。だからこそ私はここにいると言っても過言ではない。

「……本当は、明日探すつもりだったんです」

私はそう言いつつポケットに入れていた治療薬を手にして近づいた。

「あなたにこれを渡したくて」

彼は僅かに表情を動かし、何故だ、と問うてきた。私は、助けてもらったから、とただそう返せば、それだけじゃないだろう、と飛んできた。

けれど本当にそれだけなのだ。ただあの独りの時に助けてもらった、誰かに会えた、それがどれだけ心強かったか。「信じてもらえなくても構いません」私は治療薬を地面に置いて後ずさる。それを拾うかどうかは彼に任せよう。あぁ、でも願えるのならひとつだけ。

「それなら交換条件を出しましょう」
「……」

ほらみろ、と微かに口元が嘲笑するように動く。

「あなたの名前を教えてください。不便です」
「……」

炎がうつる彼の表情はうまく読み取れない。それでも訝しんでいるのはさすがにわかった。私は場違いに笑ってしまう。

「……深國だ」
「深國さん、ですね。覚えました。要らないかもしれませんが、私は高鹿です。ありがとうございました」

そう頭を下げて立ち去ろうとしたら、おい、と呼びかけられる。振り向いたら何かが投げられていて慌てて私はそれの下に潜り込んでキャッチした。

手の中に落ちてきたものを見るとそれは拳銃で、彼を見ると、もう私を見てはいなかった。

「……ありがとうございます」

それでもその優しさが嬉しくて、だけど語彙がなくてそれしか言えない。

「生きて、お互いここを出ましょうね」

あの時言ってもらった言葉を今度は私から言って、その場から立ち去った。

休息できるホテルがあると言っても、彼は来てはくれないだろう。だから私はまた一人になる。でも何でだか心細くはなかった。きっとそれは手の中にあるものだけじゃなくて、いろんなものを貰ったからだ。

さぁ、明日も頑張ろう。出来ればあんまりゾンビには出会いたくないけれど、起こってしまったら仕方がない。今日はいろんなことがあった。とにかく休もう。

五日目


今日の高鹿:【同行者】廃病院で、看護婦(アイテム扱い。1日に1点ずつHPを回復してくれる。その日の行動結果を計算後に適用)が同行を申し出た。連れて行くかは好きにせよ。食糧:−2 | 一緒に行きませんか。


ホテルからあてどもなく歩いていたら廃病院で看護婦さんに出会った。一緒に来てくれるらしい。
/HP:95 食糧:94 同行者:看護婦(HP1/1day 回復) 持ち物:拳銃(被ダメージ:-1。最低1)
何か充実してきた。


照りつける太陽を避けるように街を見て回っていたら、見事にコンクリートが崩れ鉄筋が見えている建物があった。近くに落ちた看板があったので近づいてみる。辛うじて読める看板は、朽ちたそこが病院であったことを知らしめていた。

あぁ、何か包帯でもないかな、と対して期待も――――窃盗することを厭うことも既に――――しないで、私はビルの中に足を踏み入れた。ご多分に漏れずここも埃っぽいだろうな、と高を括っていたら以外にも空気は澱んでいなかった。

思っていたよりも深く息が出来るその場所で、私は天井が崩れ日の光が当たっている床に人影を見る。埃がきらきらと舞う向こう側を手でひさしを作りながら目を眇め眺めていると、その人影は私に気が付いたのかぱたぱたと近づいてきた。

その人影が目の前に来て看護師さんだと気が付いたところで、拳銃に手をかけておくべきだったのかもしれない、と場違いに考えた。すると腕を取られ、怪我していますね、と柔らかな声と肌触りにつつまれる。包帯と、日に焼けた細い指先だ。この世界で戦っていた、指。

私が無言でその治療を受けているとさほど時間もなく、そして、しゃきん、と鋏で包帯が切られる。

「……ありがとうございます」

ひらひらとする結び目が白い蝶々みたいだ、なんてメルヘンチックな現実逃避をしてみる。しかし現状は何も変わらなかった。

彼女は笑い、ついて行ってもいいですか、とこちらの手を取る。そこでやっと私は彼女の後ろにある、おびただしいほどの布袋を、見た。背筋が凍る。きっちりと口が閉まっているそれらから何が飛び出しているというわけでもないのに。

手を握ってくる指は細い。彼女はどれだけ人の死を見たのか。そしてどうして笑っていられるのか。この世界をまだまだ知らない私には理解が出来ない。したくない。

「……はい、一緒に行きましょう」

けれど私はこの選択をしたのだ。

性懲りもなく建物を探索しているとどこかで不規則な、でも明らかに生者以外は立てないだろう音が響いた。看護婦さんにはその場にいてもらって私は走って階段を駆け下りる。すると並走する誰かが来た。深國さんだ。こころなしか顔色がいいのは気のせいだろうか。

あぁでもそんなことを考えている場合じゃない。降りたロビーの先、玄関扉の前でゾンビの群れに囲まれた人が見え私たちは得物を抜く。震える腕で、初めてトリガーを引いた。反動で腕が跳ね痺れる。痛い。でも歯を食いしばったら私も誰かを助けられるかもしれない。

銃声が何発も響き、最後の肉壁が落ちる。玄関前の人は両手を上げ、白旗のような顔色をしていた。私はそのジェスチャーに何となく笑ってしまう。イカレそうになった肩の痛みも気にならない。銃を持って、持っていて、使ってよかった。私はまだのみこまれていない。

六日目


今日の高鹿:【戦闘】口から酸を吐くゾンビたちに遭遇! 戦おうにもなかなか近寄れない! 7のダメージ!(この戦闘ではバット、日本刀、チェーンソーの効果を受けられない) 食糧:−2 | いてぇ。


酸を吐くゾンビたちに遭遇し、HPを削れられた。95-(7-1)+1。 HP:90 食糧:92 同行者:看護婦(HP1/1day 回復) 持ち物:拳銃(被ダメージ:-1。最低1) もう少し武器とか揃ってから館突っ込みたい。


看護婦さんと何気ない世間話をしながら歩いていく。しかしこの世界を認識したくないからか私の口からゾンビについて出ることはあまりなかった。ぐちゃりと道端の何かに集る蠅もコンクリートの壁を彩る何かも全部全部見たくなかった。だから見なかったことにした。

今日は誰かのレスキューコールも聞こえないし何事もなさそうだ、といやに青い空を見上げた。

「――――!!」

瞬間、声にもならない悲鳴が喉を狭め空気を受け入れることを拒む。

「あ、あ、あああああああああ!」

言葉を忘れた。歯がかちかちと頭の中で響く。

空の青さとわけのわからない痛みで私の視界は明滅し同時に外界の認識がうまく取れなくなった。わからない、わからない。何が起きたんだろう。ぐい、と誰かに何かを引かれて辛うじて足が折りたたんでいない状態になったことがわかった。

深呼吸をして、と聴こえ私は言われるままに何度かそれを繰り返す。するとようやく視界が開け、私は彼女に肩を預けた状態で立ち上がり、徐々に後ずさっていることも理解した。そして、目の前にいる敵と解けた道路さえも。私の足も、僅かに溶けているみたいだ。

足元は見ないようにした。見たらまた常識を一つ失ってしまいそうだから。腐る肉体を持ちながらコンクリートを溶かす液体を腹の中にため込むその内臓は何かに使えるかもしれないけれど、私は体重を相手と片足にに預け腰から銃を抜き頬を膨らませていた一体を撃った。

もう一体撃った。何かを撃つことに対する抵抗はどこに行ってしまったのだろう。相変わらず銃の反動は腕に来る。それでも私は撃たなければならなかった。自分を正当化しなければならないと、どこかで自分が囁いた。

正当化しなければならないことをやっているのだと考えている、と気付いていたけれど私はゾンビを殺した。死んだ人をもう一度殺した。あれ、どうして私、最初っから銃扱えてるんだ。どうしてあの時ゾンビ以外に当たらなかったんだ。……いいや、考えるの面倒臭い。

七日目


今日の高鹿:【戦闘】拠点にしていた場所に帰還中、食糧置き場に人影が。生存者か? ・・・いや、ゾンビだ! 4のダメージ! しかも食べ物が汚れ、食糧:−5。 | 戦闘続きだなぁ。


怪我をして拠点に戻ったらゾンビがいて襲われるわ食糧駄目にされるわで泣きたい。90-(4-1)+1。 HP:88(前日比:-2) 食糧:87(前日比:-5) 同行者:看護婦(HP1/1day 回復) 持ち物:拳銃(被ダメージ:-1。最低1)


「……!」

溶けてずる剥けた皮膚とズボンを鋏で切り応急処置をしてもらった私は適当な太い枝を拾ってきてもらって杖代わりにして歩く。いわゆる毒性はないみたいだけれど、どうにも体が重い。拠点に帰ったのは日付が変わったころだ。

ほっとしたのもつかの間、食糧置き場からごそごそと音が聞こえ生存者が食糧を見つけて喜んでいるのだろうかと拳銃だけ持って見に行くことにした。もしも生存者なら色々話が聴きたいところだ。即席の松明を持って場所を照らした瞬間、風が吹き、腐臭が鼻を突いた。

気付いた時にはもうゾンビは私にその崩れかけた腕を振りかぶっていた。寸でのところで前に回転をして避け、られたかとおもったのに地面についた腕が鋭く痛んだ。手首を何かが伝う。嫌な感触だ。ずるり、ずるり、と肉を僅かに落としながら近づくそれを私はまた撃つ。

脳を破壊されたら、さすがに動くことはできないみたいだ。そういえば昔、寄生虫で「生きたように見せかけられた人間」がいたとかそんなニュースを聞いたような気がする。もしかしたらこれらもそんな感じのものなのかもしれない。極力死体にも近付かないでおこう。

ゾンビから離れて、改めて辺りを見回してみると食糧の一部がゾンビのずる肉にまみれていた。うわぁ。ついさっき頭にのぼった寄生虫の可能性とかを考えると洗って食べたい気もしない。もったいないけど燃やそう。と、そこで銃声を聞きつけたのか看護婦さんが来た。

ゾンビですか?、と問われ私は苦笑いしながら頷いた。この有様ですよ、と松明を掲げると彼女は食糧を見て、次に床を、そして向こうの暗闇に視線をやった。難しそうな顔をしている。

「……何か、聴こえませんか?」
「え?」
「ゾンビの足跡がある向こうから」

言われ耳を澄ませてみると空洞音。

「……この空洞音ですか?」
「えぇ。昼間見たときにはどこかに通じる道何てなかったと思ったんですけど」

口元に手を当てながら彼女は訝しむ。それならば武器を持っている私が見に行くべきだろう。装填数と弾倉を確認し歩き始める。

看護婦さんに松明を預け斜め後ろに立ってもらい、拳銃に手を掛けて足跡を辿るとそこには地下への階段があった。空洞音は明らかにそこから聴こえてきている。

「……」

怪我をした足と腕を確認し、そこそこなら動けるな、と判断。看護婦さんの松明を受け取った。

行ってきますね、と言うと彼女は、そういう意味じゃなかったんです、と。私は笑う。そんなことはわかっている。だけど彼女は丸腰で、私はただの一般人だ。役割はもう分担されている。それだけでどこか安心するのはやっぱり私が日本人だからだろうか。

「ちょっと見てきて、深そうだったら引き返します」

夜の間は開け放された扉を閉じて上に何かを乗っければいい。そのために扉をよくよくみると殆ど凹凸も文字もないものだったから、埃がかぶっていた状態じゃよく見えなかったんだな、と考えた。地下に降りる。

かつん、かつん、とやけに響く階段を抜け、やっぱり開けっ放しにされたずる肉のつく扉を抜けると広い場所に出た。――――線路?金属と気が梯子状に組み合わされ地面を這うそれは、錆びたレールと朽ちて細くなった枕木に見える。

こんなところに続いていたんだ、と空洞の大きさに呆れながら、どこか冷静な自分が、探索を諦めろ、言った。それに逆らう理由はない。誰がいるわけでもなく頷いて踵を返せば、悲鳴が聴こえた。よく響くこの空洞だと距離がつかめない。それでも私は走る理由を得た。

悲鳴が聴こえた方向に一本道の線路を走っていくと駅にでる。ホームに登って辺りを見回すともう一つの足音と声。あれなんか聞いたことがあるような気がってそんな場合じゃない!また走り出した私は拳銃を抜きながら松明を前の方に投げて、伏せて!、と叫んだ。

その声に反応したのか一つの影が群れから離れホームから線路に落ちる。群れが緩慢な動きで相手を追うけれどそんなことはさせない。そのために私がここにいるんだ。撃つ。撃つ。撃つ。腕が痛い。それでも前よりはましな気がする。慣れたのかな。

ゾンビの群れを全部撃ち倒し、松明を拾って人影が落ちた線路にまた走る。今日は走ってばっかだ。足が痛い。腕も痛い。ホームから線路を覗きこむと、少し前に助けた気がする顔がそこにあった。顔はまた白旗を上げている。手を差し出すと、温かい温度がうつった。

大丈夫?、と声をかけてホームに引き上げると彼は、何とか、なんて言いながらへにゃりと表情を崩した。男の子なのかな。女の子にも見えるけど、どっちなんだろう。まあかわいいからいいや。

「それにしてもどうしてこんな時間にこんなところに?」

訊ねてみると、寝床がゾンビに荒らされいて新しい寝床を探していたら雨風が凌げるここを見つけたらしい。しかしここもゾンビの巣だった、と。何ともゾンビに縁があるというかなんというか。本人は泣きたくなるぐらい否定をしたいだろうけども。

そしてこうして会ったのも何かの縁なのだ。だから私は言う。

「私たちの拠点に来てみる?」

私もやることがあるからずっと一緒にはいられないけれど、朝までの安全なら確保できるかもしれない。そう付け足して、私はかれを誘った。

八日目


今日の高鹿:【探索】武装した集団に遭遇。ライフル(【戦闘】で受けるダメージ常に−2。最低1)か治療薬(ゾンビ化しつつある者を元に戻す。使い捨て)のどちらか1つを食糧8で売ってくれる。 | 武器欲しいけど、治療薬一択。


武装集団に出会い、食糧8で治療薬orライフルを交換してくれるらしい。薬選択。
HP:89(前日比:+1) 食糧:79(前日比:-8)
同行者:看護婦(HP1/1day 回復) 持ち物:治療薬


はぐ、と名乗ってくれた子は明るく拠点に戻るときの会話で私を和ませてくれた。戻ってみると、地下から顔を表すと直ぐに看護婦さんがすごい勢いで走ってきた。えっ、とたじろいだもののどこにそんな力があるのか理解できない細腕で私を引き寄せ抱きしめる。

顔の体温が上がるより前に、私は震える体に気が付いた。……あぁ、そうか。私は自分の弱さを理由にして彼女を独りにしたんだ。あれだけの死体を詰めたのだからと高を括っていた。私が死ぬかもしれない恐怖を抱えてくれていたのだ。申し訳ないと同時に嬉しい。

心配してくれる人がいるんだ、という事実は私に力を与えてくれる。私ははぐさんに、ごめんね、と目配せをして、看護婦さんの背に腕を回した。私よりも大きなお姉さんは、ますます私を抱きしめる。ごめんね、と呟いて体を離す。

その涙を比較的綺麗な袖でぬぐって頭を撫でた。軽い嗚咽を一つ漏らした看護婦さんはごしごしと目元をこすって笑ってくれる。そうしたところで私は僅かに足を引いてはぐさんを五指そろえた手で示した。

「お姉さん、こちらはぐさん。前にも会ったことある人なんだよ」

そう言うと合点がいったのか、あぁあの扉が閉まってた建物の、とこぼした。うん、と頷いて私は二人の手を取る。朝までみんなで一緒にいたらこわくないよね、と言って寝床まで歩いて川の字で寝ることに。するとはぐさんは直ぐに寝息を立て、私たちも眠りに落ちた。

起きると、看護婦さんが入口の方向で誰かと喋っていた。んー、と寝ぼけながらも拳銃を拾って歩いていくと、そこには立派な武装をした集団が。うわぁ、と一歩退いたのだけれど看護婦さんが私を手で招く。……安全、なのかな?

動揺を悟られないように頑張って歩いて訊けば、どうやら武器か治療薬を食料と交換してくれないか、と言う話だったみたいだ。私はしばらく考え、治療薬を選択した。またゾンビ化した人がいたら直ぐに助けたい。そして、自分がゾンビ化したらすぐに助かりたい。

自分が人間じゃなくなっていく感覚を味わうだ何て、そんなの。……深國さんはそれを独りで耐えていたんだ。すごいなぁ。私は、この間笑ってくれた(要に見えただけかもしれないけれど)深國さんを思い出して、この選択は間違っていない、と確信できた。

そして寝床に戻ってみて、はた、と気が付いた。ケースに入った貴重品である治療薬は、発火物と一緒に置いておくわけにはいかない。どういったものかわからない限り、そういう懸念はしておくべきだろう。うん、と考えたところで、顔を洗ったはぐさんが見えた。

「おはようございます!」

そう元気よく挨拶してくれる姿を見て、よく眠れたみたいで安心する。

「はい、おはようございます。ところではぐさん」
「なんですか?」

こくん、と首を傾がれてその姿にまた和む。でも私は断じてショタコンじゃない。

うん、と脳内で頷いて、拳銃を差し出した。

「これ、貰ってくれないかな」
「……え!」

しばらくの沈黙ののち、はぐさんは驚いた顔をする。かわいい。

「ちょっと持っていけなくなっちゃって、よかったら」

言うと、恐る恐る彼は銃を取り、申し訳ない気分になった。

拳銃が似合わない手にそれを渡してしまったこと、そして深國さんからもらった拳銃を誰かに渡すこと。それでもこの世界は戦わなければならず、そして持てないからってそれを捨てることなんて出来ない。だから有効活用をしてくれたらいい。

私は持っていた弾倉を渡し、付け焼刃の手入れの仕方を教えながら彼に呟いた。

「これ、この間助けてくれた男の人の持ち物だったの」

私の恩人なんだ、と続けると、いいんですか、と問われた。

「うん。あの人も、生存者を助けるために奔走する人だから」

これがいいの、と笑うと、嬉しそうですね、なんて言われた。……そんなに緩んだ顔、してたかな。でも、そうだね、こうして笑って喋られることがきっとたまらなく嬉しいんだ。私はそう言って食糧とかの確認を始めた。


【EX】
元来た道を辿るように歩いていたら、誰かがいたような痕跡。誰がいたんだろう、という好奇心と、血とずる肉が飛び散っていないことから安全な場所だと判断する。はぁ、と落ち着いて段ボールが敷かれた床に腰を落ち着けると一枚のメモらしき小さな紙を見つけた。

そこには、この世界の真実を知りに行ってくる、とまるでいつかの天国に行った研究者のような物言いと、それにまつわっているのだろう情報が走り書きで書かれている。この世界の真実。そんなものが果たしてあるのだろうか。……そういえばこの筆跡は見たことがある。

首を傾げて、頭を叩く。そうだ。泡さんのだ。彼が食糧や色々なもののメモを書いているのを見たときに見たものに、(少し乱れているとはいえ)似ている。彼はそこに行ったのか。真実を知りに。私はそのメモを握りこんで、自分もそう考える日が来るのかと考えた。

九日目


今日の高鹿:【探索】雨の中廃屋で、君が見つけたのは・・・@真新しい保存食だった(食糧:+7)。A謎のUSBメモリだった(クリアフラグB。アイテムではない)。どちらか選び、食糧:−3。 | 食糧が心許ないけどフラグ取得。


探索していたらUSBメモリ(フラグB)を見つけた。
HP:90(前日比:+1) 食糧:76(前日比:-3)
同行者:看護婦(HP1/1day 回復) 持ち物:治療薬 所持フラグ:B

荒廃したこの世界でこんなものを見つけるなんて思わなかった。懐かしい。


廃ビル、ならぬ廃デパートを見上げた私は同行者の彼女に指で示してみる。すると

「いかにも何かが出てきそうですね」

と頷いた。

「確かに」

私は同意する。けれどもデパートだ。天下のデパートメントストアには何かが残っているかもしれない。

もう荒らされ盗られ尽くしている可能性の方が大きいのだけれど、心許がなくなってきた食糧のことを考えるとゼロじゃない可能性にかけてみるのは分の悪い話じゃない。……いや、丸腰だから悪いかもしれないけれど。隣に目配せをしてみると、微笑みが返ってくる。

この笑顔に何度助けられただろう、と考え、私は頷いてデパートの朽ちた外壁の穴から中へ侵入を果たした。玄関は硝子が飛び散っていて危なさそうだったからだ。転けたらこわい。安全には安全を重ねておくべきだ。うん、と頷いた私はデパートの見取り図を見上げた。

食品売場とかはもう朽ちてるだろうし、洋服売場も別に今はいい。あるとしたらバックヤード。そこから攻めるべきじゃないだろうか。ということは、現在地からのルートはこうかな、何て空中で指運しながら考える。

「スタッフルームに行きますね」
「うん、わかった」

私が先行して階段の強度を調べ、看護婦さんを呼ぶ、と何回か繰り返して私たちは辿りついた。ドアノブを回して押せば、ぎぃ、と埃を立てながら扉が開く。どうやら館内のシステムルームらしい。PC端末が並んでいる。つかないかなー、と一応押してもつきはしない。

とりあえず全部押して、最後の端末のところにメモリが刺さっていた。USBメモリだ。何だろう、こんな世界でこんなものを見つけるだ何て思ってもなかった。私はそれを取って、日の光に透かして見る。赤いクリアなメモリ。どこかオーパーツを彷彿とさせる品。

中には何も入っていないかもしれない、破損しているかもしれない。それでも私は近くに放置されていた蓋を服の裾で拭ってからメモリにつけて、ポケットにそれを突っ込んだ。

こんな世界になってから、初めて理解できそうなものだったからノスタルジーに浸っているのかもしれない。たとえそれでもいいと思ってしまったのは、どうしてなんだろう。私はこんな人間だっただろうか。

そんな風に机を眺めていたら、慌ただしい足音が聴こえてきた。これは看護婦さんの靴の音だ。いつの間に別行動していたんだろう。でもそんな場合じゃないらしい。窓とドアを開けて脱出路を確保したのちに靴の方向に走る。

足音が一つしかしないからゾンビに追われているってことはないだろう。廊下の角で私たちは落ち合った。

「高鹿さん!下から銃声が聴こえてきたんです!」

それだけで私の体に緊張が走った。

誰かが戦っている、つまり戦わなければならないことが階下で起きているということだ。でも、それはつまり、生きているということ。ゾンビはゾンビ同士でそんな戦い方はしない。彼らはいつだって純粋に肉を食いちぎってくる。そんな存在だ。

「……」

生存者を見捨てて逃げれば、たぶん無傷の脱出は可能だろう。それでも、僅かに俯かせてしまっていた顔を上げれば看護婦さんは私の頭を撫でた。

「行きましょう」

それが、どこに、なんて愚問だった。私たちは誰かを見捨てることなんて到底できない。

「……ですね」

その時私はどんな顔でうなずいたんだろう。走って階段の強度なんか無視をして二段飛ばしをしながら落ちていく。

「待て待て待てっ!ぎゃああぁあ!!」

すると、声が聴こえてきた。――!この声は、忘れない、忘れられない。私は走る速度を上げた。

どこにこんな力があるのか。人間は不思議で仕方がない。ゾンビのポテンシャルはここにあるんだろうか。降りながら近くの鉄筋が伸びる瓦礫からそれを引き抜き(思ったより抵抗はなかった)、銃声が響くフロアに続く扉を開ける。

「――深國さん!」

私は思わず叫んだ。ゾンビにのしかかられているのは、顔は見えなくてもまぎれもなく深國さんの服だった。心臓が痛くなる。あ、と声が出た瞬間、ゾンビの腹が縦断と共にぶちまかれた。辺りを見回すと、はぐさんもいて、それだけで何となく状況を理解した。

深國さんが、自分をおとりにしてあの子を助けたのだと。現にはぐさんの周りにはゾンビが少ないじゃないか。私は向かってくるゾンビを鉄筋で殴り飛ばしながら(あぁ手に伝わる寒色が気持ち悪い)(気持ち悪い)、銃を構えるはぐさんに駆け寄った。

ゾンビの死体を蹴って駆けつけると、その体には大なり小なりの傷がある。

「大、丈夫?」

その頬に両手をあてて問うた。

「はい、大丈夫です」

にこりと笑うその表情はまるで太陽に似ている。あぁ、よかった。

バッグから絆創膏を出してその頬に消毒液を掛けて貼る。沁みたのか肩が動いた。

「えらいぞ、男の子だもんね」

そう笑いかけると、はぐさんはきょとんとする。え、あれ、もしかして。

「わたし、一応女子ですよ?」

その時の私は声を上げることもできずにただひたすら土下座をするしかなかった。いや、する前に止められたけど。あ、そうだこんなほのぼのしてるけど深國さん!またゾンビに噛まれてしまったんじゃないかと私は彼のもとに駆ける。

すると私よりも先に看護婦さんがゾンビを上から片づけていて深國さんの怪我の具合を検分していた。頭を触った彼女の指に血が付いていて、私は悲鳴を上げなかっただろうか。あぁ、こわい色だ。ひどい色だ。

私がそんなことを考えていたら彼女は頷いて私たちを見上げてきて、大丈夫、と言ってくれた。よかった。それでも私は彼を、彼の行動を是とすることなんて出来やしなかった。だから、怒鳴ってしまう。感情の制御が効かない。

だって、今度こそ死んでしまったら、ゾンビかとかじゃなくてこんな設備のない場所で大けがを負ったら、助からないかもしれない。私じゃ助けられない。それに、彼は諦めていた気がする。ショットガンの銃口が、落ちていたようにも見えた。

はぐさんが何かを言った気がする。それでも我慢何てできなかった。私はそのひょうひょうとしたように見える顔の近くにあるコートの襟を引っ掴んだ。深國さんは驚いた表情で私を見ている。諦めた瞬間を見てしまった。それが怖い。

この人は諦められてしまうんだと思った。沈黙が落ちる。

「……ごめん、悪かった」

そう、バツが悪そうに言われて、あぁなんてかわいい人なんだろうと、私は笑うつもりなんてなかったのに笑ってしまった。天井を見たその表情は見えない。

でもきっと泣きそうなんだろうな、とわかってしまった。私は浮かんでいた涙を拭って立ち上がる。そろそろ大丈夫だろうと手を差し出して彼に笑いかけた。ねぇ、深國さん、とりあえず、怪我人は安静ってことで運んでも文句言いませんよね!




そんなわけで看護婦さんの指示に従いながら深國さんを安全そうな場所まで運び(看護婦さんの言うとおりにやったら凄く簡単だったすごい)、私たちはそれぞれ寝床になりそうな布やなにやらを集めに行く。デパートなら何かしらはあるだろう。クッションとか、そういうのが。




「はい、深國さん。パジャマとか洋服とか探してきました。好みに合わなかったらすみません」

みんなであーだこーだ言いながら探してきたのはシックなシャツと、今着ているのに似た黒い厚手のコート。そしてジーンズ。残念ながら靴やベルト、パンツはなかった。

「あ、うん。ありがとう」

深國さんが歯切れ悪く受け取るので、私は首を傾げる。看護婦さんが「もしかして、肩とか痛めているんでしたら私が着替えを手伝いますよ」と。あぁ、なるほど。看護婦さんなら成人男性の着替えもお手の物だろう。私もそういうスキルが欲しい。

けれども深國さんは凄い勢いで首を横に振る。もしかしてそんなに趣味と合致していなかったんだろうか。でも、何となくだけどそういうわけでもなさそうだ。何か不都合があれば言うだろう。お互い子供でもないんだし。

それから部屋の外に出て三人で話し合う。深國さんを置いてとりあえず残ったメンバーで探索に行こうということに。怪我人は安静、これ満場一致。それなら装備を整えたり伝えたりいろいろしなきゃいけないなぁ、というところではぐさんが、伝えてきます、と言った。

「私は世界に絶望しかけた一人です。助けようとしても助けようとしても全て零れて怪我をして、どうしようもなくなっていた。そこに貴方が現れた。もう一度だけ人について行ってみようと、助けて助けられて、それが出来たら何か見えるかもしれないって、縋るように手を取った」

「しっかし、よくよく会いますねぇ」
「そうですね」

私たちは食料を確認しながら世間話をする。

「こんな広くてどうしようもない世界だと思っていたのに」
「私もです」
「えっ」

看護婦さんはいつも冷静で私を支えてくれている大人だと思っていた。すると彼女は静かに話し始める。

そう吐露されて、私はあの日の彼女の手の温度を思い出す。冷たかった。緊張していたんだ。あんなにやわらかく笑っていたのに。

「どうやら正解だったみたい」
「……」
「迷いながら怯えながら助けに行くんだもの。自分が馬鹿馬鹿しくなっちゃう」

違う。それは違う。

私は裏切られたことがない。騙されたこともない。そんなに強くない。同じ人間に傷つけられることをしらないからこそ、私は走ることが出来るんだ。でも看護婦さんだってそれぐらい承知してるはずだ。私がそんな大層なな人間じゃないって。それはつまり、願望だ。

私にそうあって欲しいと、彼女は望んでくれている。だというのなら、私は出来るだけ、そう振る舞おう。高潔な人間じゃないのに、高潔なふりをするだ何て滑稽だ。それでも看護婦さんが世界に絶望させない程度の支えになれるのなら、私は滑稽でもいい。そう考えた。

いつからこんな人間になったんだろう。世界がこんな風になってしまってから、私は大切な人が増えている気がする。もとは、もっと希薄で、いてもいなくなっても、あぁそうなんだ、とその程度だった気がするのに。もしかしたら極限状態が見せる幻なのかもしれない。

まぁそれでもいい。私が現実と感じているんだから。世界の定規がおかしくなったんだから、私一人が多少おかしくったって誰も気にしない。そうだ。きっとそうだ。

「買いかぶりすぎですよー」

私は笑う。

「そうかもね。でもあの時も今も、偽りはないよ」

なんだその口説き文句みたいな言葉。私は顔の体温上昇を感じる。看護婦さんはいちいちこっちを煽るようなことを言うから手におえない気がする。

「あ、そうだ」
「?」

私が呟くと看護婦さんが首を傾げた。私は扉の向こうに深國さんに何かいるものはないかと声をかけた。

すると、飲食料とか寝床とか武器、まさに私が欲しいもので笑ってしまった。

「わかりました」

そう言ってからはぐさんを呼び、扉に鍵をかける。内鍵が付いているから有事の際でも何とかなるだろう。私たちはお互い見合って頷き、歩き始めた。

崩れた壁から中を覗き込んでみたら不思議とそこにはゾンビがいなかった。案内板らしきものを見つけて物陰に気を付けながら建物内に侵入しそれを見上げる。

「……ビジネスビル?」
「いろんな会社が入っていたみたいですね」

となるとこの一階は喫茶店だったりしたのかもしれない。

とにかく何かないか、ともう薄暗くなりかけた中でまた探索をし始めたとき、静かだった上の階から物音が聞こえた。それも、多数対一の足音付きで。ざわりと肌が粟立つ。私たちは何を確認することもせずに全員階段へ駆け出していた。間に合ってほしい。いや、間に合わせてみせる。

走りながら私は考えた。入口にいないゾンビに安心をして上階に昇ればゾンビの巣窟。それは、罠と呼ばれるべきものじゃないか。頭を使う屍がいるのだろうか。これからの探索はそれを念頭に置かなければならないのか。あぁ、なんて本当に面倒臭い世界になってしまったんだろう。

廊下を曲がり音が隣の部屋からだと気が付いた瞬間、茶色と赤で汚れたシャツを纏った大柄な人が何かを抱えた姿で転がり込んでくる。

「だ、大丈夫ですか!?」

はぐさんが声をかけた瞬間、彼は獣のような視線をこちらに投げかけてきた。

「後ろだ!あいつらが来てる!!」

けれども瞬間で事態を把握したのか、相手は自分の状況を叫ぶ。私たちはもう自分が可能なことを知っていた。だからこそ何も言わずに走り出す。後ろで銃声が聞こえる中、私は案内板の内容を必死に思い出して扉を開けた。看護婦さんは男性が抱えている幼い女の子を宥めつつ並走する。

確かここを抜ければ! そう安堵を得られる筈だった曲がり角の先には屍が立ちふさがっていた。

「此処にもっ…!」

私は視界の端で振り上げられる腕を見ながら、咄嗟に地面に落ちていた角材に手を伸ばした。駄目だ、間に合わない。 そして、響く硝子の破砕音。 驚いた。

しかし驚いていた間にも手はしっかと角材を掴んでいる。

「うっりゃああああ!」

その絶妙な一瞬、ゾンビどもを揺らがせた投石は私に角材を凪ぐ時間を与えた。おそらく嫌な感触がし、おそらくおぞましい臭いをまき散らした内臓は辺りに飛び散り壁に芸術性も何もない色を施した。

「こっちですよ!走って!」

夕闇に隠されるような廊下の向こうで、誰かが私たちを呼ぶ。そして窓の外からも、声が。

「お前らー!グッドラック!」
「どこの誰かは知らんがお前もな!」

そして答える男性。その気を張らない声に私は勇気と力を貰った。走ろう、走ろう。生きるために。

…… ……  ぜ、は、と呼吸の整うまで意味のある言葉が発せられなかった。逃げに逃げた場所は、私たちが使っている地下鉄への道がある拠点。そんなところに初めて会った人を連れてきていいのか悩まなければならないと気が付いたのは、もう連れてきた後だった。

私たちを呼んで勇気をくれた人は、それではこれで、と何を求めるでもなく自分のところへと帰って行った。私たちは安心感からの脱力か、それを引き留めることも言葉以外でのお礼をすることも出来ずに見送った。あぁ、疲れた。ここにいるのは五人。動く屍はいない。

はぐさん、看護婦さん、男性、女の子、そして私。小さな女の子は座り込む私たちに背を向けるように女の子は男性にしがみついている。さっきまで震えていた体も随分と落ち着いたのか荒い呼吸は聴こえない。看護婦さんが、よかった、とその子を見ながらつぶやいた。

すると男性が女の子を抱えたまま、助かった、ありがとう、と。私たちは顔を見合わせる。すると銃の手入れをしようとしていたはぐさんが、あぁしたかったからしたんです、と笑う。

「それに私たちだけの手柄でもないですよ」

看護婦さんも続けて柔らかく。

ここに私たちが生きているのは、あの投擲をしてくれた人と導いてくれた人のおかげだ。

「それでもな

」そんな風に言いながら、相手も相好を崩した。どうにも掴めない人だ。シャツを着ていてもわかる相当鍛えられている体とは裏腹に、どうも表情は気のいいおじさんにしか見えない。

「……だけど、もしかしてお一人でも突破できたんじゃないですか?えっと、」

名前を呼ぼうとして、私は相手の名前すら聞いていないことに気が付く。相手もそれを察してくれたのか、自分の名前を告げてくれた。

「副島、副島 竹虎って名前だよ」

何て珍しい名前だろう。

虎。虎。がおー。あぁ、でもこの人のイメージにぴったりかもしれない。

「ありがとうございます。私は高鹿です」
「はぐと申します」

そんな風に次いで自己紹介をしていく。

「それで、さっきの話だけどさすがに無理だな」

副島さんは肩を竦める。

さすがにそれに対して、疑問を問うような愚は犯さなかった。そうだ、副島さんには守るべき相手がいるんだ。すみません、と私が言うと、何がだい?、何てわかってるだろうにすっとぼけられる。あぁ、きっとこの人はいい人だ。

「いいえ、何でもないです」

そんな風に副島さんの好意に甘えれば、相手は笑ってくれた。と、そこで気が付く。女の子の寝息に。静かなそれは私たちの気分も睡眠へといざなっている。

「……」

全員考えたことは同じなのか、荷物を片づけ寝床の用意をし、私たちも横になった。明日、深國さんを迎えに行こう。

十日目


今日の高鹿:【探索】スポーツ用品店でバット(【戦闘】で受けるダメージ常に−1。最低1点は受ける)を発見。または所持しているバット1つを改造(効果を−2に変更)できる。食糧:−3 | 看護婦さんに癒されることの方が重要。


スポーツ用品店を見つけたけれど、何も持っていかなかった。
HP:91(前日比:+1) 食糧:73(前日比:-3)
同行者:看護婦(HP1/1day 回復) 持ち物:治療薬 所持フラグ:B

食糧欲しいなぁ。


目が覚めたのは早朝だった。時計もないから正確な時刻はわからないけれど、光や空気からしてたぶん五時ぐらい。ふあ、とあくびをして立ち上がると、座ったまま女の子を抱える副島さんと目が合う。……。

「おはよう」
「おはようございます」

私たちは静かに挨拶を交わした。

「……」

昨日は何の連絡もなしに深國さんを置いてそのまま一夜を明かしてしまったけれど、もしかして心配しているだろうか。私は、んー、と首を傾げる。

「どうかしたのかい」
「あ、いえ別の拠点に……仲間を置いてきてしまって、心配しているかな、と」

仲間。それは彼を表す言葉として適当ではない気もしたけれど、私にはそうとしか表現ができなかった。

「んー」

はぐさんは眠そうに眼を擦りながら、看護婦さんはかすかに眠そうにしながらだけども確実に起きたみたいだ。……いや、もしかして起こしちゃったかな。

「あの、二人とも」

私が声をかけると二人は堅い床で凝った体をほぐしながらこっちを見てくれる。

「私、あっちの様子見に行ってこようと思うんだけどどうする?残るなら帰ってくるけど」
「え、行きますよ。私も心配ですもん」
「処置した側からしたら、行かないわけにはいかないわ」
「じゃあ、そういうことで」

寝た時間が寝た時間だからか、早朝にもかかわらず睡眠時間自体はちゃんと取れていたみたいだ。歩いてもふらつかない。……質はともかく。私は段々軽くなってきた食糧の入ったバックパックを持ち、副島さんに向き直る。すると、また、視線が噛み合った。

昨日の闇を覗いたような粟立ちが肌を這いそうになり、私は軽く体を抱きしめるように腕を組んだ。

「……副島さんは、一緒に来られませんよね」

これはおそらく要らぬ、気遣いどころか足枷になるだろう言葉。けれども問わずにはいられなかった。

「あぁ」

静かな声音が頭の中に届く。

「……ご武運を」

そうとしか言えなかった。定型文以外言葉を持っていなかった。私たちは副島さんに別れを告げ、朝もやが微かにかかる街を歩き出す。ご飯ぐらい、一緒にあの子と食べればよかったかな、なんて考えながら。




道中歩きながら私は、世界の真相ってなんだろう、と昨夜の副島さんの言葉を反芻させていた。あんなに小さな子が、こんな世界が、どうしようもなく理不尽な結果を被った理由があるんだというのだろうか。私たちは、いい。争いながらでもまだ生きていける。だけど子供は別だ。

大人が、世界が守らなければいけない存在。しかしその大人は崩れ、世界は人間を放棄した。どうしてこんなことになってしまったのだろう。世の中には理不尽が多いと聞かされていたけれど、こんな状況はきっと想定外だ。いや、理不尽という簡単な言葉で片付けていいものでもない。

これは、人間が世界に対して何かをしてしまい、結果として世界が人間を放棄せざるを得なくなったんじゃないだろうか。と、ここまで考えて、妄想だ、と頭の中で自嘲した。けれども、私は考えてしまった。もう真相について考えていなかった日には、戻れない。

…… …… デパートに帰ってきて、深國さんはまだ寝ているかもしれないからとりあえず階下で使えそうなものはないかと改めて探すことにした。けれども見つかるのは漏れ出た液が結晶化した電池だったり、埃まみれの食糧の空パッケージだったり、大したものは見つからない。




三十分ぐらいで探索を諦めてロビーに引き上げると、同じことを考えたのか二人とも帰ってきたところだった。

「そっちは?」
「駄目です」
「全然」

訊ねてもわかりきった答えだった。

「そろそろ深國さん起きてるかもしれませんし、上がりますか?」

そう提案されて私は、そうだね、と頷いた。看護婦さんも異論はないみたい。はぐさんは先頭を歩き、私たちはそれに続く。怒られたらどうしよう。いや、でも連絡手段がないまま音沙汰がなかたから、もしかしたら死んだと思われているかもしれない。

でもそう思われていなくても、起きたときに誰かいるってことはもしかしたら凄く重要なのかもしれない。そういう意味では、探索なんかせずに眠っている深國さんの横で色々と好き勝手言っていた方が良かったのかも。しかし今となっては後の祭りだ。

階段を上がったところではぐさんが扉を開けるのが見えた。あれ、鍵って私が持ってたよね。それじゃあ、深國さんもうとっくのとうに起きてたのかな。すこし足早に部屋に入ると、そこはがらんとしていた。誰かが、用事で少しいない、わけじゃないという空気が蔓延している。

「……」

ゾンビに襲われて逃げ出したにしては、空気が澱んでない。

「あれ?」

はぐさんが、かさり、と埃の積もっていないメモを手に取る。看護婦さんと私も近づいて中を読んでみれば、それは深國さんの書き残しだった。伝言と、行き先と、情報、そして、メッセージ。

伝言先の『副島竹虎』。それは私たちがついさっきまで一緒にいた人の名前だ。その人を探しに深國さんは館へ?――全てが、繋がる。……、……!私たちが、置いてきたから、彼らは出会えなかったと、そうだとでもいのうか。ふらり、と後ろに後退すれば何かにぶつかった。

あ、ああ、ああああ。わからない。わからない。

「深呼吸」

わからない。わからない。でも私は後ろから肩を掴んでくれる人のその言葉に従った。あ、あ、と口元を抑えて、はぐさんが心配そうに私の服を掴んでくれたから、泣くのだけは、我慢できた。

震えそうになる、僅かに前傾した体を起こして私は二人にお礼を言った。はぐさんからメモを受け取って、もう一度内容に目を通す。私たち以外も読む可能性を考慮した、深國さんらしい手紙。きっと本人は、恥ずかしがりながら書いたんだろう。

私は滲む視界の中、そのメモを広げて、近くにあったブロックを文鎮にした。私が副島さんに伝えられない可能性は高い。それでもまたここに来る人がいたら、このメモを見て言づけてくれるかもしれない。私が深國さんに出来ることは、今はこれしかない。

勝手だと思った。相談してくれたらよかったと思った。それでも、副島さんの甥っ子なのだ。自分で決めたことを、まっすぐ成し遂げに走りに行ってしまう。だけどきっと副島さんは立ち止まれる。深國さんは立ち止まれない。そういうところが危うい。

だけど、立ち止まれないのに諦められてしまう。まっすぐな矛盾。

「……」

私はメモを見下ろして、うん、と一つ頷いた。「はぐさんはこれからどうするの?」彼女は笑って、ここから出る術を探します、とまっすぐな瞳で告げてくれる。

「高鹿さんは?」

問われ、私は一瞬答えに詰まった。目的がない。小さなものはあれど、大きなものがない。脱出する気がないのかと言われたら、そうでもない。だけど積極的に脱出のキーを探すのかと自問すればそれは違う。ここにいたいわけでもないのに。空虚な人間だ。

「私も、脱出するために足掻くつもりだよ」

だから嘘をついた。どうしてここにいるのか、何故だかまるでわからない。記憶がないのかと言われたら、そうじゃないような気もする。

「それじゃあ、また」
「うん、またね」

私たちはそう言って再会の言葉を置いて別れる。

別れてから、私は自分についてぼーっと考える。自分のことなのに曖昧すぎる。瞬間的な危機には恐れおののく癖に、緩慢な危機には疎い。どうしてそれでも、平気でいられているのか。看護婦さんは何も言わずに私に着いてきてくれている。あぁ、そうか。

空虚な人間だからこそ、私は看護婦さんの願いを投影出来ているんだ。そこまで考えて、何て失礼な考え方だ、と自分を罵った。もちろん脳内で。

「脱出の方法を探す、か」

不意に隣で呟かれる。……。

「探すの?」
「どうでしょう。とりあえず、副島さんに会いに行きます」

だけど案の定副島さんはいなかった。私はため息をついて、一応メモに深國さんの居場所を副島さん宛に書き、その辺剥き出しになった鉄筋に飛ばされないよう突き刺す。紙に赤錆がついたけれど、読めないことはないだろう。そうして私たちはその建物を後にした。




歩いていくと、朽ち果てたスポーツ用品店を見つける。中に入ってみるもグローブやシューズばかりで、何か使えそうなものはなかった。看護婦さんが辛うじて使えそうなバットを見つけたけれど、食糧以外を持って行く余裕のないバックパックを見てそのままにしておいた。

十一日目


今日の高鹿:【同行者】太った研究者(アイテム扱い。1度だけ、ゾンビ化しつつある者を治療できるが、連れている間1日につき食糧1を消費)が同行を申し出た。連れて行くかは任意。食糧:−1 | 薬あるので誰か連れて行きますか。


太った研究員が同行を申し出てくれた。彼はゾンビ化しかけた人間を治療可能らしい。
HP:92(前日比:+1) 食糧:73
同行者:看護婦(HP1/1day 回復) 持ち物:治療薬 所持フラグ:B

研究員連れて行きたい方ー。


懲りずに何かないかと建物に入ってみると、人影があった。ふくよかな彼は白衣を着ていて、いかにも、な風体で、話を聞くとゾンビ化しかけている人を一回だけ治すことが出来るらしい。けれども私は治療薬を持っているから、と断りかけたところで視界の端をちらちらする影を見た。

「……何か用事があるんでしょうか」

そう廊下向こうの相手に訊ねると、驚いたのか一旦角の向こうに引っ込んでしまう。……。私は素知らぬふりをして、研究員の方に、せっかくの申し出を断ってしまいすみません、と言って別れた。そして廊下を歩き角を曲がれば、生存者。

「……何?」

睨まれる覚えはないなぁ、と思いながら私は、別になんでもないです、と返して横を通り抜ける。

「あぁ、そうそうあの研究員さん、一回だけゾンビ化を治すことが出来るみたいですよ」

言うと、一瞬雰囲気が明るくなったけれどまた目は細められる。

「別に、楓は……」
「交渉するもしないも好きにするといいですよ、と言いたかっただけです」

楓は、と呟いた彼女はもごもごと何か言いたげに私を見る。それに対して何を返す言葉も持たない私は、それじゃあ、お気をつけて、と建物をでる。きっと彼女は研究員を連れて行くだろうな。

十二日目


今日の高鹿:【戦闘】以前、老人から食糧を奪おうとしていたチンピラがゾンビに襲われている! 自業自得だが助けるか? 助けるなら5のダメージ、お礼に泣きながら食糧3をくれる。 | 目の前で襲われてるんじゃねぇよ助けるよ。


前に老人から食料を奪おうとしていたチンピラが目の前でゾンビに襲われていたので助けた。92-5+1。
H:88(前日比:-4) F:76(前日比:+3)
同行者:看護婦(HP1/1day 回復) 持ち物:治療薬 所持フラグ:B

「いた」だからなー。


荒廃した街を目的もなく歩いていく。歩いて歩いて、そこで悲鳴が聴こえた。私は近くの落ちた鉄パイプを拾って駆け出し、ゾンビに襲われている生存者が見える。見た覚えのある顔だ。……そう、確か前にご老人から食べ物を奪おうとして別の生存者に阻止されていたチンピラだ。

自業自得。そう言ってここで踵を返せばそれで終わる。だけどそんなこと、出来るはずもない。隣の看護婦さんを見ればわかっているのか、こくり、と首肯。うん、私はエゴイストなんだ。目の前で死なれるのが、嫌だっていうだけで動く。そうして私は体を沈めパイプを下から凪いだ。

…… …… ごしゃり、と最後のゾンビを打ち倒せば相手が泣いて蹲った状態から立ち上がる。助かった、あんたのおかげだ、と食糧を無理やり渡され、私はその手を振り払う。驚いたみたいで、チンピラは一歩後ろのよろめいた。食べ物が落ちた。

「私は貴方が食糧を奪おうとしていたのを見ました。あなたは理性を持ったまま、同じことをしていたんです。ゾンビよりも素晴らしく人間らしくて、だからこそゾンビよりも本能に忠実な獣に成り下がっていた。目の前じゃなかったら助けませんでした。……それでも、」

そこで私は言葉を切る。言ったって意味がない。わかってる。意味なんてない。

「い、意味わかんねぇだって食いもん奪われたって死なないじゃねぇかよ!俺は死ぬところだったんだぜ!」

あぁ、胸糞悪い。くそったれ。パイプで地面をたたく。

「いいです、もう」

納得のいかない表情でチンピラはどこかに走って消えていった。

「……」

看護婦さんは私の頭を撫でる。何か、久しぶり、だ。

「怪我、してるから休めるところに、ね」

その優しい声に私はただうなずくしかなかった。どうしてあんな人でもある意味生き生きしているんだろう。理不尽だ。

あれから雨風をしのげる場所に移動して、私はずっと毛布にくるまって考えていた。どうして、どうして私は世界について何の知識もないんだろう。目的もないんだろう。人間は生きるために生きることはできない。目的が欲しい。目的のために生きていたい。誰かのために生きたい。

脱出してどうなるかもわからないなら、私はここで誰かのために奔走するのもいいのかもしれない。脱出できるとなったら、看護婦さんだけでもここから逃がせばいい。きっと彼女は許してくれないから、私が消えればいい。だけど今は彼女のために走っているようなものだ。

私はより、もっと、掴みにくい目的を求めるべきなんだと思う。それこそ……世界の真相のような。と、そこで思い出す。泡さんが残して行ったメモの内容を。――――この世界の真実を知りに行ってくる――――と書かれたその文面を。私でも、知りに行っていいんだろうか。

きっと死ににいくようなものかもしれない。それでも、目的がない人生よりずっと、ずっとマシだと考えてしまったのは、きっと何かの勘違いだ。恐慌酩酊状態だ。うん、でも決めてしまった。決まってしまった。だから、私は。

毛布から顔を出せば、いつのまにかもう夜で、火の番をしている看護婦さんの顔が薄闇に浮かんでいる。

「……あの」
「起きたの」

何でもないような顔でそう言われ、私は申し訳なくなりながら体を起こしてお雛様状態になった。

「あの、私、館に行きます」
「そう」
「だから」

「逃げてください、なんて言わないでね」
「!」

見透かされて、る。

「私はあなたに希望を託した。それに、危なっかしいから離れられないの。理解して」

そう、ふわり、と笑われて誰が断れるというのか。あぁ、私はこの人に弱い。すごく弱い。

「……じゃあ、はい、改めてよろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」

いたずらっぽく笑う看護婦さんにつられて、私は何日かぶりに笑ったような気がした。それじゃあ、明日行こう。生きるために。そして死ぬために。

十三日目 (館:一日目)


館の高鹿:【戦闘】暗い部屋を手探りで進む君の指にひやりとした感触。蛇だ、しかも足下にも無数にいる! 12(フォロワーの助けを受けられれば8)のダメージ! 食糧:−3 | 何だ、蛇か。


蛇に襲われたところを泡さんに助けてもらう。代わりと言っては何だけども治療薬を渡した。88-8+1。
HP:80(前日比:-7) 食糧:70(前日比:-3)
同行者:看護婦(HP1/1day 回復) 持ち物:なし 所持フラグ:B

転ばぬ先の薬。


メモに書いてあった通りの場所に、その館は存在していた。陰鬱な影を持つ、中に蠢く何かを隠そうともしないその建物はまさに地獄を形容しているかのようだった。「開け、ますよ」入口の観音開きの扉の片側だけ押せば、ぎぃ、と蝶番が軋む音共に『そこ』は開いた。大口を開けた闇。

「……」

私は看護婦さんの手を一瞬だけ握って、また離し、足を踏み入れた。そうして扉が閉まる。風で煽られたのか、あるいは『何か』によってか。けれどもどっちでも結果は変わらない。一応扉を確かめてみると、押しても引いても開かなかった。

「行きましょうか」
「そうだね」

何が起こるかの事前情報もない館の大した明かりもない廊下を進み、とある部屋に入った。何かないかな、と手近な机に手を置いた瞬間、意思を持った冷たさがひやりと指先に絡んだ。……!暗闇に慣れた視界が映し出すのは蛇。そして、床一面にも。

「あ、やぁ……!」

急に動いたからか、足首をじくりかまれる。違う違う違う違う、別にあなたたちを攻撃したいわけじゃない!それでも蛇は跳ね、伝い、私と看護婦さんを囲んでくる。まさかこんな直ぐに死ぬだなんて。そう覚悟した瞬間、刃が煌めいた。

「……え」

見ればそこには泡さんが立っていた。一面には蛇の死骸。死骸。死骸。これを泡さんが一人でやったって言うんだろうか、と考えたところで一緒にいた軍人さんを思い出す。そうだ、二人だ。けれどもその姿は、ない。

「あわ、さん」

気が抜けたのか私は蛇の血で染まった絨毯に腰を落とす。そこで気が付いた。乱れた包帯から除く、奇妙な色の肌。こんな症状を私は見たことがある。えぇと、そうだ。深國さん。彼がゾンビ化をしかけていた時、確かこんな肌じゃなかっただろうか。つまりは、そういうこと。

手を差し出されて、私はその手を掴んで立ち上がる。

「……泡さん、これを」

私はバッグから治療薬を取り出し、泡さんの手に押し付ける。すると彼は……ううん、彼女は、驚いた顔で私を見た。手を触ってわかった。泡さん、女の人だ。私は、使ってください、と言う。

それでも躊躇する雰囲気を醸し出すから、もう一言付け加えた。

「こんな時のために持っていたんです」

泡さんは何も喋らない。泡さんは疲れた顔をしていた。

「死なないでください」

治療薬を載せた手を掴んで、そう言葉落とす。

「……ありがとう」

私でも役に立てた。

そうして私たちは別れ(彼女は彼女で考えるところがあるらしい)、私と看護婦さんは安全そうな部屋を探して蛇との戦闘で負った傷を癒し、眠りにつくことにした。目が覚めても世界が終わっていませんように。

十四日目 (館:二日目)


館の高鹿:【探索】別の階へと続く階段を閉ざす柵。2箇所のハンドルを同時に回す必要があるようだ。同行者がいるかフォロワーの助けを受けられれば探索度+1。いずれにせよ食糧:−4 | 同行者いるから無問題。


階段への道を阻む仕掛けが施された扉を看護婦さんと開ける。
体:81(前日比:+1) 食:66(前日比:-4) 探:1
同行者:看護婦(HP1/1day 回復) 持ち物:なし フラグ:クリアB

一緒に来てくれた看護婦さんに感謝。


起きて探索していると、奇妙な仕掛けが施された扉を見つける。どうやらこの先に階段があるようで、扉の向こうの空気が微かに移動していた。調べてみると両脇のハンドルを回すと開くみたいで、私たちは息を合わせてその扉を開ける。

そこもまた、闇が続いていた。

十五日目 (館:三日目)


館の高鹿:【探索】鍵の壊れた戸棚から日記の断片を発見。『夜、庭で犬を見た。先週くたばった番犬に不気味なほど似てた。それにあの頭……いや、きっと見間違いだ』探索度+1、食糧:−3 | よし、探索!よし!(戦闘したくない)


鍵が壊れた戸棚から日記の断片を発見。死んだ犬に似た番犬が夜、歩いていたらしい。屍の犬……?
体:82(前日比:+1) 食:63(前日比:-3) 探:2
同行者:看護婦(HP1/1day 回復) 持ち物:なし フラグ:クリアB

不気味。


館にあった、鍵が朽ちて壊れ床に落ちている戸棚から私たちは日記の断片を見つけた。

内容は『夜、庭で犬を見た。先週くたばった番犬に不気味なほど似てた。それにあの頭……いや、きっと見間違いだ』と。死んだはずの番犬に酷似した犬が歩いていた……?

この内容を真実だと信じるとするのであれば、これは人間以外のものも動く屍状態になっているということだ。暗闇から喉を噛み千切られる想像をしてしまい、息が詰まった。喉が引きつり、何とはなしに首に手を当てる。

「……行こうか」
「そう、ですね」

私は日記を戸棚にしまった。

十六日目 (館:四日目)


館の高鹿:【探索】急な眠気で倒れる君の耳に「よくもったわね。では施術を」の言葉。目覚めるとHP+9、ゾンビ化しつつあるか、ハーフゾンビか、機械の体ならそれらも解除。声の主は一体? | 「な、に……?」


寝て起きたら何か変な女性に変なことを言われた。
体:92(前日比:+10) 食:63 探:2
同行者:看護婦(HP1/1day 回復) 持ち物:なし フラグ:クリアB

施術って何だ。おい。と言っても別に機械化したとかじゃないみたいだ。よかた。


「ん……」

いつの間にか眠っていたみたいだ。蛇に襲われたり屍の犬の噂を読んだり不思議な仕掛けとかで疲れていたのかもしれない。

「よくもったわね。では施術を」

そう女性の声が響く。もった?施術?何のことだろう、と目を開けようとしたけれど、私はまた睡魔に襲われた。闇。

十七日目 (館:五日目)


館の高鹿:【探索】屋根も壁もうごめく腐肉に覆われた廊下。まるで動物の体内だ。先に進むなら8ダメージを受け探索度+1。回り道するなら疲労で3ダメージ。いずれにせよ食糧:−3 | 先に進む。


腐肉に覆われ蠕動している廊下を歩いた。92-8+1。
体:85(前日比:-7) 食:60(前日比:-3) 探:3(前日比:+1)
同行者:看護婦(HP1/1day 回復) 持ち物:なし フラグ:クリアB

気持ちが悪い。


目を開けたら私たちが最後に眠りに落ちた部屋で、あの女性この声は何だったのか、と首を傾げた。普通に夢だったのかもしれない、と妙に目覚めのいい体を起こして看護婦さんと一緒に部屋を出て館を進んだ。

ある扉を潜り抜けたときだ。どくり、どくり、と蠕動する廊下に出てしまう。

「動いて、ますよね」
「紛うことなく」

訊ねるとそう返ってきて自分が幻覚を見ているのだと信じていたかったのにそれは呆気なく崩れた。一歩踏み出す。集団幻覚を見ているんだとしても、この、感触は。この臭いは。

「……」
「迂回します?」
「いえ、進みましょう」

返答は首肯。

十八日目 (館:六日目)


館の高鹿:【戦闘】左右の壁と天井に吸盤で貼り付く異形のゾンビ3体に包囲された! 6のダメージ、さらに4のダメージ、さらに6のダメージ!(アイテムの効果や使用回数は別々に適用せよ) | あいたたた……。


天井左右からそれぞれゾンビに襲われた。85-(6+4+6)+1。
体:70(前日比:-15) 食:60 探:3
同行者:看護婦(HP1/1day 回復) 持ち物:なし フラグ:クリアB

天井とかからだなんて卑怯だー!


「危ない!」

そう腕を引っ張られた瞬間進行方向の廊下に攻撃が入った。

「!」

見れば天井に貼りつく腐肉体がいる。

「なに、あれ……」

呟くといきなり衝撃を受け横転し壁にぶつかり喉が胸がひしゃげた気がした。

「う、あ……ごほっ……」

噎せると、影が覆いかぶさってくる。

「……!」

咄嗟に前転したけれど足がその一撃で悲鳴を上げる。嫌な音がしたような気がする。でも大丈夫。折れてない。

しっかと床を踏みしめる足に安堵した私は痛む体を押して廊下を走り、どこに行けるかもわからないまま走り続けた。ただ逃げたい一心で、看護婦さんと一緒に。

十九日目 (館:七日目)


館の高鹿:【探索】壁も床も白い研究室らしき部屋で、レポートの断片を発見。『ハーフ発症による抗ZV実験/有効性を確認/問題点:低い適合率、次世代への抗体継承』探索度+1、食糧:−4 | 「何、ここ……?」


上下左右真白な研究室らしき部屋でレポートの断片を手に入れた。
体:70 食:56(前日比:-4) 探:4(前日比:+1)
同行者:看護婦(HP1/1day 回復) 持ち物:なし フラグ:クリアB

「抗ZV実験……まさかここって……!」


今日も今日とて館を歩く。テーピングのおかげで真っ青になっていた足は探索に支障はないけれど、蔓延する腐臭は方向感覚を狂わせる。気持ちの悪さで自分が何をしたいのかどこに向かいたいのかどこから来たのかまるで分らなくなる。

と、そこで奇妙な扉を見つけた。鋼鉄の扉。それは押してみると開く気配がし、ゆっくりとその中に体をすべり込ませてみた。

「……何、ここ」

そこは上下左右全てが白に統一された部屋。カプセルやら培養器などがあるから、何かの実験室かもしれない。私は机にぽつんと残されたレポートらしきものを手に取った。

『ハーフ発症による抗ZV実験/有効性を確認/問題点:低い適合率、次世代への抗体継承』

辛うじて読めたのはそこだけで、ところどころ意味が分からない。それでも。

「……ZV実験?……まさか、ここって」

そこまで呟いたところで私は口をつぐむ。ゾンビに関する実験を、やっていた……?でも、それってつまりゾンビというものが世界がこうなる前にこの館では存在を感知していたということになる。

……だからだ。この屋敷が【世界の真相】を内包しているとされているのは。そしてだからこんなにも多種多様なゾンビがいる。

どうしてこの屋敷で行われていたのか、もしかして世界変貌はこの屋敷が原因なのか、それはまだわからない。それでも、ここは研究をしていた。世界を揺るがした何かを。

私はその事実を胸にレポートを机に置き、部屋を探索していた看護婦さんに声をかけて部屋を出た。

二十日目 (館:八日目)


館の高鹿:【探索】本棚の裏で、アンプル状の弾丸を発射する奇妙な拳銃を発見。対ZV銃(「ゾンビ」と書かれた【戦闘】で受けるダメージ常に−4。最低1点は受ける)を得た! 食糧:−3 | よっしゃあああああ!


本棚の裏からアンプル射出銃を手に入れた。
体:71(前日比:+1) 食:53(前日比:-3) 探:4
同行者:看護婦(HP1/1day 回復) 持ち物:対ZV銃(【対ゾンビ】dmg-4/最低1) フラグ:クリアB

また私は銃を取る。


「うわっ」

ぐらり、と軽く床が揺れ本棚から何冊か本が落ちた。地震……かな。

「大丈夫?」

問われ、大丈夫です、と答えつつ、私は落ちた本を拾い適当なところにしまおうとした。……本棚が動いている。先ほどまで埋まっていた本棚と本棚の間が僅かに隙間を見せていた。

「……あの」

本を置きながら看護婦さんを呼ぶと、彼女もそれに気が付いたみたいだ。

「これ、開けたいので手伝ってください」
「了解です」

二人で本棚を押してみると、そこには引き棚のへこんだ取っ手が一つ。罠があってもいいように慎重にそれを開けると、銃と弾丸が隠されていた。

「……アンプル、かな」

看護婦さんが弾丸を灯りに透かし、私は銃身を手に取る。重い。そして一枚のメモを見つけた。「対ZV銃」そうたった一言だけ。それでも私はこの銃がゾンビに特化しているものだということを理解する。

「……頂戴していきます」

その呟きは闇に消えた。

二十一日目 (館:九日目)


館の高鹿:【戦闘】廊下の曲がり角で、天井と足下からゾンビの上半身と下半身が同時に奇襲! 7のダメージ、さらに6のダメージ!(アイテムの効果や使用回数はそれぞれ別々に適用せよ) | うん、やってやんよ。


上半身のみと下半身のみの異形ゾンビに遭遇し、銃で応戦した。71-(7-4)-(6-4)+1=67
体:71→67 食:53 探:4
同行者:看護婦 持ち物:対ZV銃(【対ゾンビ】dmg-4/最低1) フラグ:クリアB

二十二日目 (館:十日目)日目


館の高鹿:【探索】館の調査に来たという重武装の無口な軍人と遭遇。情報(探索度2)か食糧20を渡せば蘇生キット(使い捨て、使用者のHP20回復)をくれる。いずれにせよ食糧:−3 | 必要なのフォロワーさんだよ。考え中。


重武装の軍人と出会い、情報あるいは食糧を蘇生キットを交換しないかと持ちかけられ、断った。
体:67→68 食:53→50 探:4
同行者:看護婦 持ち物:対ZV銃(【対ゾンビ】dmg-4/最低1) フラグ:クリアB

二十三日目 (館:十一日目)


館の高鹿:【戦闘】垣根が迷路じみた裏庭で、前後を巨体のゾンビに挟まれた! 14のダメージ! 食糧8を投げて消費すれば1体の注意をそらせ7ダメージですむ。いずれにせよ食糧:−2 | 死ぬ死ぬ死ぬ。しかし食糧は離さん!!


垣根迷路の裏庭で巨体ゾンビに囲まれ襲われた。68-(14-4)+1。
体:68→59 食:50→48 探:4
同行者:看護婦 持ち物:対ZV銃(【対ゾンビ】dmg-4/最低1) フラグ:クリアB

二十四日目 (館:十二日目)


館の高鹿:【探索】奇妙な機材だらけの手術室めいた部屋で、レポートの断片を発見。『身体機械化による抗ZV実験/有効性確認できず/データ収集用への転用を検討』探索度+1、食糧:−3 | 「また、抗ZV実験についてか……」


機材だらけの実験室らしきところでレポートの断片を発見。
体:59→60 食:48→45 探:4→5
同行者:看護婦 持ち物:対ZV銃(【対ゾンビ】dmg-4/最低1) フラグ:クリアB

二十五日目 (館:十三日目)


館の高鹿:【探索】黒い染みで汚れた部屋でノートの断片を発見。『動物実験。人間に有効な抗体は人間の中からしか生まれない。息子では不適。あの方法しかないのか』探索度+1、食糧:−5 | 「動物実験……犬?あと息子って……」


黒い染みに塗れた部屋でレポートの断片を発見。
体:60→61 食:45→40 探:5→6
同行者:看護婦 持ち物:対ZV銃(【対ゾンビ】dmg-4/最低1) フラグ:クリアB

食糧がそろそろやばいかな。

二十六日目 (館:十四日目)


館の高鹿:【アクシデント】部屋に仕掛けられた落とし穴に落ちた! 8のダメージ! 同行者がおらずフォロワーの助けも受けられなければ、脱出に手間取り食糧:−8。 http://t.co/9G4IJVR0 | 看護婦さーん!


落とし穴に落ちた。誰だよこん畜生。61-8+1。
体:61→54 食:40 探:6
同行者:看護婦 持ち物:対ZV銃(【対ゾンビ】dmg-4/最低1) フラグ:クリアB

同行者の看護婦さんのありがたみを噛みしめる。

二十七日目 (館:十五日目)


館の高鹿:【探索】大量の薬が整然と並ぶ部屋。治療薬(ゾンビ化しつつある者を元に戻す。使い捨て)を得た。館内のフォロワー1人も24時間以内にリプライすれば治療薬を得られる。食糧:−3 | 欲しい方がいればどうぞ。


薬が並んだ部屋を見つけたけれど何も持って行かなかった。
体:54→55 食:40→37 探:6
同行者:看護婦 持ち物:対ZV銃(【対ゾンビ】dmg-4/最低1) フラグ:クリアB

ダメ減も回復も手放せない。

二十八日目 (館:十六日目)


館の高鹿:【探索】壁も床も白い研究室らしき部屋で、レポートの断片を発見。『ハーフ発症による抗ZV実験/有効性を確認/問題点:低い適合率、次世代への抗体継承』探索度+1、食糧:−4 | またかよ!!!迷ってんだろお前!!


白の実験室にまた来てしまった。もしかしたら迷っているのかもしれない。
体:55→56 食:37→33 探:6→7
同行者:看護婦 持ち物:対ZV銃(【対ゾンビ】dmg-4/最低1) フラグ:クリアB

食糧やばいかなー。

二十九日目 (館:十七日目)


館の高鹿:【探索】奇妙な機材だらけの手術室めいた部屋で、レポートの断片を発見。『身体機械化による抗ZV実験/有効性確認できず/データ収集用への転用を検討』探索度+1、食糧:−3 | 絶対これ迷ってる。


また機材だらけの手術室に来てしまった。
体:56→57 食:33→30 探:7→8
同:看護婦 持:対ZV銃(【対ゾンビ】dmg-4/最低1) フラグ:クリアB

探索度と食糧交換できればいいのに……。

三十日目 (館:十八日目) 治療可能:十日以内


館の高鹿:【アクシデント】壁から汚れた杭が急に飛び出し、11のダメージ! これで1点でもダメージを受けた場合、十日以内(あと10行動)に治療できないとゾンビ化しゲームオーバーだ! | 歩く感染拡大者が感染しました。


汚れた杭が刺さり感染。57-11+1=47。
体:57→47 食:30 探:8
同:看護婦 持:対ZV銃(【対ゾンビ】dmg-4/最低1) フラグ:クリアB

ついに感染きたぜー。


相も変わらず私たちは館の中を探索していた。似たような部屋ばかりで気が滅入ってくる。いや、もしかしたら本当に同じ部屋なのかもしれない。垣根の迷路、わからない仕掛け、二階にいたはずがいつの間にか一階にいる、そんな拒絶感の漂うここは、少しばかり、辛い。

「……食糧、どこかで調達しないといけませんね」私は軽くなったリュックを軽く揺らして話しかける。彼女は、そうですね、なんて笑ってくれはしたけれどお互い限界が近いことはさすがの私でもわかっていた。真相を知るのが先か、死ぬのが先か。さぁどちらだろう。

「ゾンビの肉って食べられそうにないのが残ね……、っ」

腹が、痛い。痛い。痛い。いた、い。くだらないことでも言おうとした矢先、手荒いツッコミのようなタイミングで私は壁から飛び出してきた杭に脇腹を刺された。

「高鹿さん!」

慌てた声に反応しようとして、私は、床に崩れた。




「……」

暗い天井。それが、次に私が目を覚ました時の視界だった。痛む腹を押さえながら片腕を支えにして起き上がり、辺りを見渡す。看護婦さんはいなかったけれど、巻きつく包帯の存在に無事だろうことを認識して安堵の息を吐く。あいててて。

死ぬような怪我じゃなかったのかな、と服を捲り上げたら見えた包帯を指でさすってみたら僅かに、動いた。皮膚が肉とくっついて動いた感覚じゃなくて、あの、ずるり、と皮膚が肉と解離したような状態。この状態を私は知っている。だって何度も見てきた。化け物へのカウントダウン。

「起きたんだ」

お腹に落としていた視線を上げるとそこには看護婦さんがいた。

「綺麗な水を探していたんだけど、結局見つからなかったんだ」

残念そうに言う彼女の声は、どこか震えているような気がして、私は申し訳ないような、よくわからない感情に襲われた。

「……私、まだ眠いみたいなんでもう一回眠りますね」

頭の後ろを掻きながら、こんな自分とでも一緒にいてくれますか、という質問を封じ込める。だって見捨てるなら戻ってこない。

「おやすみなさい」
「はい、おやすみ」

ゆっくりと私の頭を撫でる手が、やけにあたたかく感じた。

三十一日目 (館:十九日目) 治療可能:九日以内


館の高鹿:【アクシデント】長い廊下がぐにゃりと歪む錯覚。突如視界が赤に染まり、体の中で何かが暴れ回る痛み! 「現在のHPの十の位(100の場合は10とする)×2」のダメージ! | ごりごり削られる。


廊下が歪むと共に視界が真っ赤に染まって体に激痛、が。47-8+1=40。
体:47→40 食:30 探:8
同:看護婦 持:対ZV銃(【対ゾンビ】dmg-4/最低1) フラグ:クリアB

死にそう。


朝。起きて服を捲ってみると、生者のものではない肌の色が包帯が覆う範囲を越えて私のその事実を意識させる。

「……」

ふ、と息を吐いて壁に手をつきながら立ち上がると痛みはそれなりに引いたことを理解した。このまま治ってしまえばいいのに。詮のないことを考えてしまう。

「行きますか」
「うん」

看護婦さんは変わらない笑顔でうなずいてくれた。 




歩いていたら何か罠がありそうなほど真っ直ぐな廊下を見つける。

「歩きます?」
「お好きなように」

隣に立つ訊いて見れば判断を委ねられる。迷っていた気がしたんだけど、どうでもないのかな。見たことのない廊下を前にして数秒考え、私は歩くことを決めた。

「それにしても、自分がこの立場になるなんて、実は考えたことなかったんですよね」
「……感染のこと?」
「はい」

治療薬を持って駆け回っていたのに私はいざこうなってみるとどうしたらいいのかわからない
まるでイメージトレーニングとかをしていなかったから、逆に絶望感もついてこないのだけれど。泡さんとか深國さんに言ったら心配してくれるかな。怒られたらどうしよう、何てそんなことを考える程度には頭がお花畑である。

「諦めないでね」
「……もちろんです」
「それにしてもこの廊下ってすごく長いですね」

と、そこまで言ったところで酷い貧血のように視界がぐらりと歪み曲がり世界の色彩が反転、した。

「……っ」

次いで真っ赤に染まった視界は私の平衡感覚を決定的に狂わせる。

「高鹿さん!高鹿さん!」

左から聴こえる声。自分が立っているのかいないのかもうそれすらもわからない。伸ばした手はあたたかい手に取られ安堵した、のも束の間体が衝撃を受けた。痛い。痛い。体の中で何かが暴れる感覚に私は看護婦さんを突き飛ばして壁に吐く。びちゃりと服に吐瀉物が跳ね、ねとりとまとわりついてくる。

ひっくり返る胃の中は何もないのにそれでも痛みは収まらなくて口の端から顎から伝う胃液がやけに頭の中を冷静にそして同時に混乱させてきた。わからない。わからない。ゾンビ化に伴う何かなのか。胃液と唾液がまざった液体は止まらず私は床を汚し続ける。気持ち、悪い。

何回も手の甲で拭って拭って、それでも唾液はとまらない。いつの間にか背中をさすってくれていた看護婦さんの手の温度に、私は涙が出た。あたたかい。

三十二日目 (館:二十日目) 治療可能:八日以内


館の高鹿:【探索】荒れ果てた中庭の隅で日記の断片を発見。『どうも妙だ。日増しにキツくなるあのにおい。それに毎日地下に運び込まれる袋の中身はなんなんだ?』探索度+1、食糧:−4 http://t.co/9G4IJVR0 | 「やっと外に……中庭かぁ。あれ、紙?」


光に誘われて出た場所は中庭だった。そこで日記の断片を拾う。
体:40→41 食:30→26 探:8→9
同:看護婦 持:対ZV銃(【対ゾンビ】dmg-4/最低1) フラグ:クリアB

「腐ってきた」


休息を提案してくれた看護婦さんのそれを蹴って私は館内を歩いていた。一か所に留まっていても何かが好転する気が全くなかったからだ。ふらつく足と嘔吐感を抑えながら歩いていると、光が射す壊れた扉を見つける。出口を期待してそれを開いてもらうと、垣根と壁に囲まれた外。

「中庭、かぁ」

私はこの館で期待を持つことが間違いなんだ、と改めて認識しながら探索を始めた。




やけに毒々しいほどの緑を携えた垣根の下、日記のようなものが覗いている。引っ張り取って開いて見れば殆ど黒ずんでいて読めないけれど、中の方に辛うじて読めるページが。

『どうも妙だ。日増しにキツくなるあのにおい。それに毎日地下に運び込まれる袋の中身はなんなんだ?』

袋、と読んで私が一番に思い付いたのは看護婦さんに出会った時に後ろにうずたかく積まれていたあれだ。……いや、あそことここは離れすぎているから気のせいだ。

私は内容を記憶してその日記を元の場所に置いた。

「そっちは何かあったー?」

垣根の向こうから声が聞こえてきたので私は日記があったと告げる。立ち止まっていたのにどこか息が上がっているような気がした。扉の所に戻ってみると看護婦さんが駆け寄ってきてくれる。

日記の内容と中庭の形や規模の情報を交換して私たちは箱庭の外を後にした。ぐらぐらする頭はどこか外の音が遠くなる。これは、きちんと情報をまとめ始めた方がいいんじゃないだろうか。 安全そうな部屋を見つけて私たちは眠る準備をする。

今まであったことをきちんとまとめようとノートを取り出しペンを持って紙に書きつけようとして、震えている手に気が付いた。

「……」

荒い息。震える手。痛む頭。止まらない唾液。腹の色を、確認するのが怖かった。胴体が今どうなっているかだなんて私が一番知っている。

諦めてノートとペンを置いて毛布を被ろうとしたら、目の前を通った手がそれらを取っていった。

「何が書きたかったの」
「……このやからに、入ってからのこつぉ、を、まとめ、ようと」

上手く呂律が回らない。恥ずかしい。

「わかった。口に出してくれたら私がまとめるから」
「……っ」

私は唇をかみしめ顔を伏せた。

「私は貴方の言葉を書きとめる。だから、諦めないで。伝えることを。生きることを」

そう言って前に座ってきた看護婦さんを見ると、真っ直ぐ、茶化すこともなく私を見てきている。私は口に溜まる唾液を飲み下し、口を開いた。

三十三日目 (館:二十一日目) 治療可能:七日以内


館の高鹿:【戦闘】垣根が迷路じみた裏庭で、前後を巨体のゾンビに挟まれた! 14のダメージ! 食糧8を投げて消費すれば1体の注意をそらせ7ダメージですむ。いずれにせよ食糧:−2 | 14ダメージを受けます。


中庭は迷路庭に繋がっていたようだ。41-(14-4)+1=32。
体:41→32 食:26→24 探:9
同:看護婦 持:対ZV銃(【対ゾンビ】dmg-4/最低1) フラグ:クリアB

「……、……」


朝。改めて脱がされた。看護婦さんは白い布を私の胴体に巻きつけて足にも巻いて腕にも巻かれていく。やわらかい感覚に私はほっとしたけれど、どうにもまかれている場所が多い気がする。見れば確かに肌が変色していた。青かったり茶色かったり緑だったり。

あぁ自分は人間じゃなくなっていっているんだと思った。不思議と嫌悪感はない。リュックを背負い部屋から出てまた当て所もなく館内を歩いていく。




光の射す扉を開くと垣根が私たちの前に立ちはだかった。垣根の迷路。またか、と感じたけれどどうも前に歩いたところとは形が違うみたいで私たちは虎穴に入らずんば虎子を得ずの精神で迷路に足を踏み入れた。




「高鹿さん!」

T字路で直進せずに右に曲がった看護婦さんが私の名前を叫ぶ。瞬間前後から一気に右へ吹っ飛ばされ垣根を突き破って壁にぶち当たった。私はがはとべたつく血を吐く。

「こっちです!」

腕を引かれて立ち上がりもつれる足を御しながら私は必死に走った。

三十四日目 (館:二十二日目) 治療可能:六日以内


館の高鹿:【探索】鍵の壊れた戸棚から日記の断片を発見。『夜、庭で犬を見た。先週くたばった番犬に不気味なほど似てた。それにあの頭……いや、きっと見間違いだ』探索度+1、食糧:−3 | 延々同じところをぐるぐる。


頭の中が霧がかったかのように考えられない。紙片入手。
体:32→33 食:24→21 探:9→10
同:看護婦 持:対ZV銃(【対ゾンビ】dmg-4/最低1) フラグ:クリアB

「……?」


看護婦さんに怪我の手当てをしてもらった。起きた時にはもう怪我は痛んでいなかった。すごいなぁと考えながら私は立ち上がり、いつものように看護婦さんに導かれるように館内を歩き始めた。




看護婦さんと一緒に入った部屋はどこか見たことのあるような気がして私は鍵の壊れた戸棚をあさった。すると汚れ古びた日記が出てきて開く。どうにも汚れているせいか内容が頭に入ってこない。唯一見えたのは犬に関する記述だけ。

『夜、庭で犬を見た。先週くたばった番犬に不気味なほど似てた。それにあの頭……いや、きっと見間違いだ』

それでも文字情報として目に入るのに意味を解せない。私は諦めてその本を看護婦さんに渡した。触れた指先がどこかあたたかかった。こんなに冷え性だっただろうか。

三十五日目 (館:二十三日目) 治療可能:五日以内


館の高鹿:【戦闘】暗い部屋を手探りで進む君の指にひやりとした感触。蛇だ、しかも足下にも無数にいる! 12(フォロワーの助けを受けられれば8)のダメージ! 食糧:−3 | また蛇かよ……。誰か助けて下さい(´・ω・`)。


蛇の大群に襲われていたところを副島さんに助けてもらった。33-8+1=26。
体:33→26 食:21→18 探:10
同:看護婦 持:対ZV銃 フラグ:クリアB

館初日がフラッシュバック。


包帯がまた増えた。もともとろしゅつしている部分が少ないにしてもよりそれが少なくなる。手の甲や顎。この調子なら末端や顔まで到達するのにさほど時間は要らない。包帯を解いた肌はまだらもようになっている。臭いは気にならない。体臭になってしまっているのか。嫌だな。

しかしこんな体になっても探索以外することがないのだ。二人で館を歩く。何気なく開いた部屋はやけに暗くしずまり返っていた。入ってみると窓が板で打ち付けられているらしい。私はうなずいた。部屋の中心に足を出した瞬間ぼとりぼとりとかげが落ちてくる。

「……!」

それは館に入った日にそうぐうしたものと同じ。けれど助けてくれた彼女はいない。かんごふさんがアンプル銃を撃つもへびは元気だ。ゾンビじゃ ない。武器を持つことさえ出来なくなった私は何も持っていない。このままじゃ。このままじゃ。ともだおれだ。

「あ、あ……」

「ああああああああああああああああああ!!!!」

腹をおさえて館内にひびけばいいと思った。誰か助けてくれと だれかかんごふさんだけでも連れて行ってくれたらいいと。そんなばんかんの思いを込めて私は叫んだ。おさえた腹がずれる。うまく筋肉にうでがのらない。

かんごふさんがへびをけ散らして私のうでをつかんだ。走るんだ。私たちは走り出す。いや走り出そうとした。突じょ入ってきた影は蛇をけ散らし そして私のうでをつかんで肩に持ち上げる。そのかたわらには幼女が脇に抱えられていた。あぁ あぁ この人は。




……。 ……。 二人がへびの追げきを振り切り、おろされた私はかんごふさんの手を借りながら歩いてそえじまさんがクリアした手近な部屋に入る。どさり、と私がくずれるように壁際で腰を下ろすと、アンプル銃を横に置いたかんごふさんも腰を下ろし、そえじまさんも。

私はうまく動かないからだを動かし、床に手をついて頭を下げる。

「……あい、がつぉ、ぐざいました」

すると頭をなでられた。しせんをあげると、よくがんばった、という感じのそえじまさん。あ、そうだ。そうだ。伝えなきゃいけないことがあったんだ。

私がかんごふさんを見ると、彼女はわかってくれたのかうなずいてくれる。

「副島さん、深國さんと言う男性からメッセージを預かっているんです」

そしてあのノートを開いて渡す。覚えている限り書きだしたあの紙の内容だ。

そして読み終わったそえじまさんは、ありがとうな、とノートを返しながら言ってくれた。だけど、深國さんの名前が出たときに女の子の瞳が揺らいだ気がしたのは、どうしてだろう。何か、知っているんだろうか。

三十六日目 (館:二十四日目) 治療可能:四日以内


館の高鹿:【探索】引き出しの奥から日記の断片を発見。『研究員どもが慌ててやがる。研究棟で爆発があったらしいが、こっちは足が妙に痒くてそれどころじゃねえ』探索度+1、食糧:−4 | 「……かゆ、うま?」


引き出しの奥から日記のようなものを見つけた。かんごふさんに読んでもらおう。
体:26→27 食:18→14 探:10→11
同:看護婦 持:対ZV銃 フラグ:クリアB

食料やべぇ。



三十七日目 (館:二十五日目) 治療可能:三日以内


館の高鹿:【探索】極限状況は人を成長させる。君のHPを+9するか、同行者1人の効果を「【戦闘】で受けるダメージ−4(最低1点は受ける)」に変更してもよい。食糧:−2 | HP回復を選択。


幸か不幸かゾンビ化に体がなれはじめたようで体力がかいふくした。かんごふさんは泣いていた。
体:27→37 食:14→12 探:11
同:看護婦 持:対ZV銃 フラグ:クリアB

生きろと言われたのか。

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(看護婦さん視点)館内で単独行動をしていたとき、二人の人間に出会った。三人で交換を果たし、私は彼女に治療薬を打った。

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(看護婦さん視点)一人見張り番をしていたら、人影が入ってきた。事情を聞くと館の外に出るところを通りかかったらしい。来るか問われ、彼女を一瞬見てから私は首を振った。すると、じゃあせめてもの選別だ、と彼は食料をくれた。/食:12→21


「調子は、どう?」

私が話しかけると彼女は、今日は調子がいいの、と笑った。呂律が回らなくても、ちゃんと言ってくれるようになっているのはいいのかわるいのか。それだけこの子が物を考えられなくなっているのかもしれない、と私は悪い方向に捉えてしまう。

不意に、涙が落ちた。彼女は薄く開いた瞼の奥で確かに驚いたような表情を見せ、私は直ぐに拭う。

「心配しないで」

きっと、何とかしてみせるから。言外にそう含めて頭を撫でると、ふにゃり、と落ち着いた雰囲気を醸し出し、眠りにつく。最近はずっと寝ているような気がした。

もしかしたらこの睡眠時間の長さもゾンビ化の影響なのかもしれない。もう、たぶん、一刻の猶予もないところまで迫っているんだろう。

私は彼女を部屋の隅に隠し、銃と食糧を持って探索に出た。久しぶりの一人行動。動かないと事態は好転しないと、彼女は言っている。だから私もその言葉を胸に動こう。がちゃり、と扉を開け歩き始めた。




何もない部屋、廊下を通り過ぎ、また部屋に入った時のことだ。二人分の人影が落ちている。話をしてみると、一人は治療薬と食糧の交換、そしてもう一人はこの銃と食糧を交換しないかと持ちかけられた。

迷わなかった、と言ったら嘘になる。だってこの銃は決して私が見つけたものじゃない。彼女のものだ。それでも、武器があの子の命に代わるというのなら、罵られても怒られても構わない。つまりは、他に選択肢なんてないってことだ。私は僅かに笑い、それらの交換に応じた。

交換を終え、走りながら考える。この館でも希望は捨てるものじゃない。持つものだ、と言うことを。部屋に帰ると未だに彼女は寝ていて安堵する。その傍らに膝をつき、包帯を解くと見える変色した彼女の肌にゆっくりと針を刺て、私は彼女に治療薬を打った。間に合った、んだろうか。




…… ……  呼吸が落ち着いてきたように見える彼女の傍らで銃を片手に見張り番をする。すると不意に部屋のドアが開いた。粗雑じゃない、ゆっくりとした足取り。

「……人間ですか?」

問うと、肯定の返事。

「出口へ行こうとしているだけなんだ」

私は銃口を一旦下げ入室を促した。

「一緒に行くかい?」

今度は逆に問われ、私は横たわる彼女を一瞬見てから首を振る。すると彼は、じゃあせめてもの餞別だ、と食糧を渡してきて慌てると、いいんだよ、と笑って相手は行ってしまう。

残された私は座り、色々な人に感謝をして背中を壁に預けた。

三十八日目 (館:二十六日目)


館の高鹿:【探索】荒れ果てた中庭の隅で日記の断片を発見。『どうも妙だ。日増しにキツくなるあのにおい。それに毎日地下に運び込まれる袋の中身はなんなんだ?』探索度+1、食糧:−4 | またかよ!


中庭で前に読んだ日記と似たようなことが書いてある手記を発見。
体:37→38 食:21→17 探:11→12
同:看護婦 持:ナシ フラグ:クリアB

探索度ってこんなに要るんだろうかと疑問がふつふつと。

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館で出会った人に「これを預かってくれないか」と言われ、布で蓋をされている液体が入った瓶を渡された。
体:38 食:17 探:12
同:看護婦 持:火炎瓶(預かり物) フラグ:クリアB



三十九日目 (館:二十七日目)


館の高鹿:【探索】館の調査に来たという重武装の無口な軍人と遭遇。情報(探索度2)か食糧20を渡せば蘇生キット(使い捨て、使用者のHP20回復)をくれる。いずれにせよ食糧:−3 | 保留。預物が引き取られたら探度で買う。


身を固めた軍人さんと情報交換で蘇生キットを入手。そして預かっていた火炎瓶を数奇屋さんに返し、お礼に食糧を頂いた。
体:38→39 食:17 探:12→10
同:看護婦 持:蘇生キット(使用者のHPを20回復。使い捨て) フラグ:クリアB

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館内を歩いていたら傷がたくさんついた機械人形を見つける。試しに蘇生キットを差し出してみると、食料をくれた。かわいいので撫でておく。お互い頑張ろう。
食:17→27 持:無し



四十日目 (館:二十八日目)


館の高鹿:【探索】極限状況は人を成長させる。君のHPを+9するか、同行者1人の効果を「【戦闘】で受けるダメージ−4(最低1点は受ける)」に変更してもよい。食糧:−2 | HP回復を選択。


ゾンビ化の後遺症も無くなり初め、ようやく安心したのかよく眠れた。
体:39→49 食:27→25 探:10
同:看護婦 持:無 フラグ:クリアB
HPが危険値からじわじわ這い上がってきてるでやったね。



四十一日目 (館:二十九日目)


館の高鹿:【探索】焼けた書類に紛れたノートの断片を発見。『必要なものは素体だ。負傷にも餓えにも強く、感染に十日は耐えられる体質を持ち、そして強運の持ち主』探索度+1、食糧:−3 | 「十日、耐えられる……?」


『実験』に使う素体について書かれたノートの断片を見つけた。
体:49→50 食:25→22 探:10→11
同:看護婦 持:無 フラグ:クリアB
「つまり本来は十日も持たない…、……!まさか私たちは、集められた……?」

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通りすがった部屋にいた方から自分には不要だから、と白紙の日記帳を食糧と交換してもらった。これがあれば私のメモしていることを複写して誰かに渡すことも出来るはずだ。
食:22→20 持:白紙の日記帳



四十二日目 (館:三十日目)


館の高鹿:【戦闘】夜の花壇に舞う青いゾンビ蝶の群れ! しかもその鱗粉には同士討ちを誘う幻覚毒が! 8のダメージ! 同行者がいる場合この戦闘ではその効果を受けられず、ダメージ+7! | 看護婦さんも自分も相手を殴るのか。


蝶を見ていたら看護婦さんとはぐれてしまってゾンビに囲まれていた。早く逃げなきゃ。逃げなきゃ。50-(8+7)=35。
体:50→35 食:20 探:11
同:看護婦 持:白紙の日記帳 フラグ:クリアB
同士討ち。



四十三日目 (館:三十一日目)


館の高鹿:【探索】引き出しの奥から日記の断片を発見。『研究員どもが慌ててやがる。研究棟で爆発があったらしいが、こっちは足が妙に痒くてそれどころじゃねえ』探索度+1、食糧:−4 | またお前か。


前にも似たような部屋で、同じ日記を見つけたような気がする。勘違いだろうか。
体:35→36 食:20→16 探:11→12
同:看護婦 持:白紙の日記帳 フラグ:クリアB



四十四日目 (館:三十二日目)


館の高鹿:【休息】館内のものを利用して簡易トラップの製作に成功! 館内で次に引く【戦闘】ではあらゆるダメージを受けない(館内のフォロワー1人もこの効果を受けてよい)。食糧:−3 | 館内フォロワーさん来ませんかー。


簡易トラップを仕掛けた。これで暫くは大丈夫だろう。
体:36→37 食:16→13 探:12
同:看護婦 持:白紙の日記帳 フラグ:クリアB
状態:次回【戦闘】無効化



四十五日目 (館:三十三日目)


館の高鹿:【戦闘】廊下の先で何かを引きずる音・・・だんだん近付いてくる! 巨大なゾンビ蛇が君を丸呑みにしようと迫ってきた! 14のダメージ!(食糧10を捨てるならダメージ0) | 簡易トラップの効果でダメージゼロ!


規格外という言葉すら生ぬるい大蛇に丸のみにされそうになったが、トラップに誘い込み事なきを得た。
体:37→38 食:13 探:12
同:看護婦 持:白紙の日記帳 フラグ:クリアB